僕はケニー。雑種の犬です。

僕はケニー。雑種の犬です。「雑種」という言葉の意味はよくわからないけれど、多分「普通の」とか「平凡な」という意味だと思います。

僕のルックスは「ごく平凡」ではないかと思いますが、獣医の先生も子犬教室の先生も、僕を最初に見た時に「あなたは一体何かしら?」ときいたんです。

「犬」、ということは職業柄判ったのでしょうが(そうでなければ獣医とかやってないですよね?)、この質問は「君は、一体どんな種類の犬なの?」という意味でした。僕が困っていると、マミーが答えてくれました。

「えっと、ケニーの母親は、コーギーとチワワのミックスらしいです。これはシェルターの担当者から聞きました。父親は、はっきりしないんですが、ミニ・オーストラリアンシェパードじゃないかということで…」。ダディーが横から付け加えました。「母犬がいた家の隣の人がミニオージーを飼ってたらしいんですよ(笑)」。獣医さんも苦笑しています。 僕の出生のことを話しているのに、ちょっと不謹慎な気がしました。

僕の見かけの特徴を話しましょう。大きさは、小型犬よりはちょっと大きく、中型犬というには小さ目。毛は基本がチョコレート色で、胸とお腹、そして手足の先が白毛です(ソックスを履いたような感じ)。僕はこの白のポイントカラーが気に入っています。この毛色が”実の父”と僕との繋がりのような気がしているからです。僕の体には”実母”の特徴も出ています。足が短くて胸板が厚く、顔はチワワ似といわれます。目の色は、虹彩は薄緑で瞳が茶色です。マミーは、「ケニーの目は珍しくて、とってもきれいよ」と言ってくれています。(照れてしまいますが、けっこう嬉しいです。)

僕が生まれたのは、米国カリフォルニア州の内陸部です。埃っぽくて、遠くに山が見えるだけの乾いた土地でした。実母を飼っていた家はあまり裕福ではなく、僕を含め3匹の子犬が生まれて困っていました。そこで近くの動物シェルター(日本の保健所に近い)に預けられたのです。僕達兄弟が生まれてから2ヶ月余の冬のことです。突然ママと離されて、僕たちは混乱しました。寂しくていっぱい泣きました。でも兄弟3人で寄り添って耐えました。

シェルターはがらんとしていて、煩くて、怖かった。コンクリートの床の大部屋がいくつかあって、大人の犬たちはすごく悲しそうな顔をしていました。子犬は違うケージに入れられるのですが、大部屋の前を通った時にある老犬が言いました。「君たちも、引き取り手がいなければ1週間でおしまいだ。ここはキル・シェルター(殺処分あり)だからね。可愛くして誰からに貰ってもらうんだよ」。シェルターで働く人々は、良い人たちのようでしたが、いつも忙しそうで構ってくれませんでした。意識して、僕たちに特別な感情を持たないようにしているようでした。「死ぬ」、ということがどういうことか分からないけれど、とてもとても怖かった。僕たちは生まれたばかりだったし。

このシェルターに来て5日目に、一人の女の人が現れました。彼女の名前はミッシェル。40代半ばのシングルマザーで、身なりは無造作でしたが、世話好きな人だとすぐわかりました。ベイエリアという、ここから車で2時間ぐらい離れた所で「アニマル・レスキュー」をやっている人です。ミッシェルは、僕たちを一人一人つまみ上げてじっくり観察し、「うん、これなら引き取り手がみつかるわ」とニンマリしました。僕たちは、精一杯尻尾を振ってミッシェルの手を舐めしました。「このシェルターから出る」ことが僕たちが生き残る唯一の方法だ、と本能的にわかっていたからです。

ミッシェルの家には、もう先住犬が6匹もいて、とてもごちゃごちゃしていました。カウチや椅子には布がかけてあって自由に座っても良かったです(しばらくしたら何だか体が痒くなったけど)。トイレは床に置いてある新聞紙だし、ベッドも古くてボロボロだったけれど、シェルターよりは100倍も良かったです。ご飯も1日2回ちゃんと貰えました。大きな犬はお外にいて、いつも家の中の犬に向かって吠え立ていました。「お前達、こっちに少しでも出てきてみろ、どちらが目上か思い知らせてやるぞ」ってね。そんなことがあったから、僕は今でも大きい犬が苦手です。

さて、ミッシェルの家に来てから3日後が僕にとって一生を変える日となりました。マミーとダディーが、僕達兄弟を見に来たのです! マミーは「ペットファインダー(無料のレスキュー犬検索サイト)で写真を見ました」と言いました。マミーは昔、黒白の猫を飼っていたそうで、やっぱり黒白(タキシード柄)の僕のお兄ちゃんが目当てで来たのです。

その日も僕達兄弟は、外の大きな犬の吠え声に反応して部屋の中を行ったり来たりしながら、吠え返していました。「チョッ、チョッ、チョッ」と口笛がして、僕はそちらを向きました。僕の兄弟達は、吠えるのに一生懸命で何も聞こえていないようでした。「こっちにおいで」とマミーが優しい声で言いました。僕はすぐには近寄らなかったけれど、立ち止まって尻尾を振りました。「こんにちは!」ってね。

「この仔がいい」というマミーの声に、ダディーが「うーん、こちらの女の子の方が大人しそうだよ」と答えました。でもマミーが「ううん、絶対この仔!」と言い、ダディーも了解。結局、黒白のお兄ちゃんやコーギー似の妹ではなく、茶白の僕を選んでくれたのです。その日から僕のマミーとダディーの生活が始まりました。(続く?)

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